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「八重洲ダイビル」竣工 歴史を継承した外観に最新の省エネ・ウェルネスを導入

2025.07.07 11:02
6月30日、ダイビル(大阪市北区)が東京都中央区で建設していたオフィスビル「八重洲ダイビル」が竣工した。
ダイビル(大阪市北区)が東京都中央区京橋1丁目で進めていた「(旧)八重洲ダイビル」の建替え事業。6月末に新たな「八重洲ダイビル」が竣工した。
同ビルは2021年12月末に閉館した「(旧)八重洲ダイビル」を建替えたもの。名称は旧ビルに寄せられた愛着を継承したいとの思いから、再び「八重洲ダイビル」とした。場所は「東京」駅八重洲口からまっすぐ伸びる八重洲通り沿いに位置し、JR各線や東京メトロ銀座線「京橋」駅からは徒歩4分。東京メトロ銀座線・東西線「日本橋」駅からは徒歩5分。東京メトロ丸ノ内線「東京」駅や都営地下鉄浅草線「宝町」駅からも徒歩10分圏内に建つ。八重洲地下街と地下で直結し、天候に左右されることなくスムーズにアクセス可能。複数路線を使用できる、交通利便性の高い場所に立地している。
規模は地上11階地下3階建て。延床面積は2万2655・19㎡。メインとなるオフィスフロアは3~11階で、1~2階は店舗区画。地下1階が八重洲地下街と接続しており、同階にテナント向けの貸会議室も備えている。オフィスの基準階面積は1フロア約390坪。L字型の無柱空間で、デッドスペースのない効率的なレイアウトが可能。リーシングは順調に進んでおり、ほぼ満床で竣工を迎えた。旧ビルから引き続き入居を決めた企業もいる。3階は同社とCompass Offices Japan(東京都港区)が共同運営するシェアオフィス「ouno(オウノ)八重洲 × Compass Offices」の入居が決定。大阪の「御堂筋ダイビル」にある「ouno 御堂筋」に次ぐ2拠点目で、開業は今年秋の予定だ。
特徴の1つ目がデザイン性。旧ビルが日本を代表する建築家・村野藤吾氏による設計で、石張りの力強い柱と繊細な梁による外観が親しまれてきた。今回の建替えでは「継承と革新」をキーワードに、外装材は旧ビルと同じ濃色の花こう岩を採用。垂直性を強調した柱型による重厚感と、窓まわりの繊細な陰影や柔らかなアーチによる優美さを表現した。また角地を最大限に生かした伸びやかな佇まい、八重洲通りに面した1~2階連続したアーチによる品格あるショップファサードを実現。周辺の大規模開発とは異なる印象的な外観デザインとなった。
特徴2つ目は環境性能。屋上に太陽光発電設備を設置するほか、高効率熱源と大温度差送水システム、自然換気システム、外気冷房、Low―e複層ガラスなども採用。画像センサーによる照明・空調制御やエネルギー情報提供システムも導入することで、テナントの省エネルギーに貢献。使用電力もCO2フリー電力の導入を予定している。環境認証制度では、米国の建物環境認証「LEED」の「GOLD」を取得予定。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)では、オフィス部分において最高位の星6つおよび「ZEB Ready」を取得した。
特徴3つ目はWellnessの向上。入居者はスマホから空調のON/OFFや温度・照度調整操作が可能。共用部の一部には、色温度と照度を自然光に近づけたエコサーカディアン照明を採用。健康性や快適性の維持・増進につながる取り組みを行い、「CASBEE―WO(ウェルネスオフィス)」では「Sランク」を取得した。
BCP対応も強み。地震発生時の揺れを大幅に低減できる中間層免震構造を採用。長時間の電源供給が可能な設備(非常用発電機7日間運転、オフィス内照明やコンセント等への標準供給)、10日間継続利用可能な水供給設備、備蓄倉庫なども用意した。水害対策としては、電気室を最上階に設置。防潮板も取り付けることで水の侵入を防ぐ。また緊急排水槽も設置することで上下水道途絶時でもトイレの使用が可能。万一の災害に備えて様々な対策を施した。
竣工当日には竣工式も開催。冒頭で丸山卓社長が登壇し「設計・監理を担当した日建設計様、施工担当の鹿島建設様などの多くの方の助力によって当初のスケジュール通りに竣工を迎えました。リーシングも苦戦することなくスムーズに進みましたので、今後は入居テナントに長く定着していただくよう注力していきます」と述べた。