週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

大阪の名建築を無料で特別公開 「イケフェス」3年ぶりリアル開催

2022.11.21 17:25

138の建築物が参加
参加者から人気の老舗オフィスビル
   現役で活躍する大阪府内の様々な建築物の中から、「歴史」「意匠・デザイン」「工法・建築技術」などの面で特色のある物件を一般に公開するイベント「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2022(愛称・イケフェス)」が10月29日・30日の2日、大阪府内各所で開催された。このイベントは、大学教授、大手設計事務所、ゼネコン、デベロッパーなどをメンバーとする実行委員会の主催で2014年に初めて開催された。その後は毎年秋に開催されていたが、一昨年・昨年は新型コロナウイルス感染症の影響でWeb開催となっていたため、リアルな形での開催は3年ぶりとなる。
 今回参加した建築物は合計で138。著名な貸ビルでは「梅田スカイビル」「大阪ガスビル」「グランフロント大阪」「ダイビル本館」「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」「ブリーゼタワー」などが参加した。ジャンルはオフィスビルのほか、商業施設、共同住宅、学校、教会・寺院、ホテル・民泊施設、飲食店、橋や水門など多彩。
 開催中は、これらの建築物が、通常は利用者以外の立ち入りを禁止している部分も含めて内部を一般に公開したり、所有者や使用者、設計者などによるガイドツアーが行われたりした。また、参加建築物の中には、これに合わせてトークショーやワークショップ、特別展示などを実施したところもあった。当日は2日間とも好天に恵まれ、多くの参加者が大阪の建築物巡りを楽しんだ。
 参加者に特に人気が高かったのが、「三井住友銀行大阪本店ビル」「生駒ビルヂング」「大阪農林会館」「芝川ビル」など戦前に竣工され、戦災やその後の都市開発の波を乗り越えて今でも現役で活躍する老舗オフィスビル。これらのビルは淀屋橋~北浜~本町のエリアに集中して残っていることもあり、参加者は1日に何軒もビルをハシゴして、共用部に設けられた大型金庫や瀟洒な階段など、レトロ感あふれる内外装を自由に楽しんだ。中には建物自体のキャパシティの問題に加えて、感染症対策として、館内への出入りを入れ替え制などにしたビルもあり、それらには長い入館待ちの列ができていた。

先着順のツアー形式 設計士や運営者が説明
 今回、初参加となった建築物の一つが、大阪市西成区に昨年開業したばかりの一棟貸し宿泊施設の「ARCHITEKTON~the villa Tennoji」(運営・オノクル/大阪市浪速区)。周囲を住宅に囲まれた狭い敷地の中に9人分の宿泊スペースを確保するために、建物中央にらせん階段を設けたユニークなレイアウトや、南側に窓を確保できない弱点をカバーするための屋上採光、3階建ての扱いになることを防ぐために床の一部に敢えてスノコを用いるなど、設計上の様々な工夫点について、設計士や運営者自身が説明した。
 同様に今年初参加だったのが「オロナミンC」や「ポカリスエット」などの商品で知られる「大塚グループ大阪本社 大阪ビル」(大阪市中央区)。「柱は垂直で、窓の内側に設置されている」という従来の常識にとらわれずに、柱と窓枠を一体化し、広い室内空間を確保したのが大きな特徴。耐震性などを考慮した結果、建物全体を鋭い二等辺三角形が覆うという印象的な外観になっている。また、これに合わせて1階のエントランスロビーは、床や壁のデザインだけでなく、受付カウンターの形状など各所に三角形が用いられている非常にユニークなデザインとなっている。イベント当日は先着順のツアー形式で、同社社員が館内を案内した。

PAGE TOPへ